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『ミュウツー!我ハココニ在リ』における考察/三枝みや

■第3章 ミュウツーの不安2

 さて、そんな不安でいっぱいのミュウツーが月明かりの下、おともをするピカチュウとニャースとの会話を聞くに、ミュウツーとコピーポケモンの間には必ずしも仲間意識があるわけではないらしい。人工的に造られた生命という共通項はあるにしても、それがいわゆる『友情』で結ばれているとは限らない。むしろ『強制的に巻き込まれてしまった運命共同体と、それに対する義務と責任』と表現したほうが的確だろう。ミュウツーは確かにコピーポケモンたちのまとめ役である。強すぎる力で彼らを庇護する棟梁のような存在だろう。しかし、その人望ゆえに推されたリーダーというわけではなかった。いまさらだが、その違いはかなり大きい。
 ピカチュウ対コピーのピカチュウの争いを止めるミュウツーは、以前とは比べられないくらい優しくなったと思う。あれは攻撃されそうだったピカチュウではなく、コピーのピカチュウの心がこれ以上傷つかないよう配慮していた。彼にとってコピーポケモンたちは、自分にかせられた義務以上に守りたいものではなかったかと思うのだ。しかしその優しさは、時として言葉以上に残酷で。仲裁としての働きよりも、オリジナルに認められかつ理解されて満たされた者の余裕と、そうでない者の渇望の差を歴然とさせた結果になっている。
 また、ロケット団の精鋭部隊を画面越しの空に見て戦意を喪失しているミュウツーだが、このとき「人間は自分を造り出した親のようなものだ」云々で悩んでいる。これは争いを避けるという点では一見意味深のようだが、何のことはない。前述のようにもうすぐ親になってしまう戸惑いから『マタニティ・ブルー』が進んでしまっただけなので、けして人間に愛着がわいたわけではないと思う。
 どういうつもりか執行猶予(仲間割れを誘うための時間?)を与えてきたロケット団との衝突を前に、ピカチュウを中心とする一部のコピーポケモンがピュアーズロックからの脱出を決起していた。これは外の世界で自由に生きることを最大の目的として上げているが、けしてそれだけではないと思う。もちろん、自分がコピーであることを誰も知らない環境で、過去を捨てて一からやり直したい、という気持ちは確かにあるだろう。
 ここで思い出してほしいのが、コピーポケモンたちは「コピーとして造り出された」という共通点はあるものの、種族的にはそれぞれ一匹ずつしかいないという事実である。つまりはパートナーがいないのだ。同じ系統ということで、ニドクイーンとサイホーンのような『しあわせな例外』はあるにしても、皆が皆伴侶を得られる状況にないのは言うまでもない。しかしながら、勝手にコピーたちを造ったという意味で諸悪の根源にあたるミュウツーには、ミューというつがい相手がいる。オリジナルともいえるミュウに自分を認められ、理解され、そのうえ深く愛されて、あまつさえその子どもまでできようとしているのだ。コピーポケモンたちにしてみれば、さぞかしふんまんやるかたないところだろう。つまり、「ぼくらもお嫁さん(お婿さん)が欲しいよう!」という希望が根底にあるわけだ。ミュウツーヘの反発には、このあたりの羨望と本能から来る欲求が影響していても不思議はない。
 ロケット団が攻撃を仕掛けてきたのは、東の空が白み始めた未明の頃。あの状況からして徹夜で活動していたであろうコピーポケモンたちだが、少なくとも島を出てから湖を渡りきるまでに、ある程度の時間を要したものと思われる。しかしミュウツーがその距離をあっさり飛び越えたところを見ると、彼にとってはたいした移動でもなさそうだ。そう考えると、見送ってから救出に行くまで、多少時間が空いていることに気づく。おそらくその間に、逃げ回るのではなく戦うことを決意したのであろう。
 だがミュウツーは、当初はあんなにも人間との争いを嫌がっていた。それを短時間で路線変更したところをみると、どうも自問自答の結果の開き直りとは少し違う気がする。良くも悪くも生真面目なミュウツーは、往々にして融通が利かないことの方が多いだろう。だからこそ、こういう場面ではミューが何かしら影響を与えているように思えてしかたがないのだ。
 自分の気持ちが落ち着かないうちは立ち入り禁止、というのを押して、彼はひとりミューに会いに行ったのではないか。その際、いまの自分たちを取り巻く状況説明をするのと一緒に、これはあくまで自分で解決しなければならない問題だからと、卵とともに隠れていることを説得したのだと思う。
 こう言ってしまうと何だが、ロケット団にしてみれば研究材料くらいにしか使い道のなさそうなコピーポケモンたち(問題発言なのは承知しているが、ドミノのセリフを極端にするとこうなるのだと了承して欲しい)より、幻と謳われたミュウとその卵(しかもオリジナルとコピーの間の子)の方が、商品価値は遥かに高いはず。ここで発見されてしまうと、それこそ世界のバランスを崩しかねない事態になりそうなのは、いかに無邪気なミューでも理解できただろう。それについてはミュウツーが一番危機感を抱いているから、彼の精神安定のためにも、ミューは一生懸命叱咤激励して送り出したのだと思う。ミューが後方支援に徹することを約束してくれたことで、ミュウツーはそこで初めてサカキとの直接対決に臨む覚悟を決められたのではなかろうか。
 守るべきものの存在は弱点になりかねないが、守りたいと思う気持ちは強さになるということを、このときの彼はすでに知っている。
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